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前回(続:会社は株主のものではない)、前々回(企業は株主のものではない)の続きです。

なぜ「会社は株主のものだ」という誤解が広まるようになったのかとともに、「会社は株主のものだ」という主張がどの程度真実を含んでいるのかを考えてみたいと思います。

まず「会社は株主のものだ」と主張する人は何を根拠にそう言っているのかというと、コーポレートファイナンスの理論がベースになっていると推測できます。恐らく法学、経済学、Organisational Behaviour、コーポレートガバナンスを主に勉強している人は「会社は株主のものだ」とは言わないのではないかと思います。それらの学問では「会社は株主のものだ」という主張をサポートする研究はされていないと思われるからです。
ところがファイナンスの分野では違います。ファイナンスのバイブルと言えるBrealey & Myersの教科書には「会社とは何か」という最初の項目に「会社は株主が所有している」という趣旨のことが書いてあります。さらに会社の種類や機関、財務マネージャーの役割の次にはPrinciple-Agent Problemの説明まであります。( Richard A. Brealey, Stewart C. Myers, and Franklin Allen, Corporate Finance, McGraw Hill Higher Education; 8Rev Ed edition, 1 April 2005)

コーポレートファイナンスという学問の重要な目的の一つは、下記の図の赤い部分の価値を算出することです。
bs16082006.png
これはつまり株主資本の価値「Shareholder Value」というやつです。「Enterprise Value - Long-term Depts + Idle Assets = Shareholder Value」なのですが、債権者の持分はほぼBSに乗っかっている金額そのものなので、ファイナンスの肝はDebtholder ValueよりもShareholder Valueの算出にあります。株主はResidual Caimerなので、株主資本価値の算定はいろいろな要素を考慮してちょっと複雑な計算が必要になるわけです。

このようにコーポレートファイナンスは視点が株主寄りの学問なので、株主の権利やResidual Claimerとしての株主の地位を考慮に入れて「会社は株主のものだ」と言ってしまってもコーポレートファイナンスの学問の範疇においては特に問題はないかもしれません。これが「会社は株主のものだ」の真実性です。イチローの例えで言えば、イチローがロッカールームで仲の良いチームメートに「打率さえ気にしなければ俺はホームラン30本打てる」と言ったとしたら、チームメートは少なくともロッカールームの中では「イチローはホームランバッターだ」と言っても差し支えないと思います。ただ、前後の文脈を省略して公の場で「イチローはホームランバッターだ」と言ったら、「いや、ちょっとそれは誇張しすぎだろ」となってしまいます。

「会社は株主のものだ」論者はしばしば「それは法律で決まっている」とか「そんなものは資本主義の基本原則だ」というようなことを言うのですが、それは大いに問題です。繰り返しになりますが、法律は「会社は株主のものだ」なんて言ってませんし、資本主義の原則という割にはあまりにも多くの人が株主価値至上主義に疑問を投げかけています。(例えば、Allan A. Kennedy, 2002. The End of Shareholder Value: Corporations at the Crossroads, Perseus Books Groupとか、WILLIAM W. BRATTON, 2002. Enron and the Dark Side of Shareholder Value, Tulane Law Review, May 2002とか、Post, J. E., Preston, L. E. and Sachs, S., 2002. Redefining the Corporation: Stakeholder Management and Organizational Wealth, Stanford University Pressとか、Kay, J. and Silberston, A., 1995. Corporate Governance, National Institute Economic Review, vol.95, No.3, National Institute of Economic and Social Researchとか他にもたくさん。)要するに決め付け方が乱暴すぎるのです。

というわけで(前回の結論に戻りますが)、何も知らない人が「会社は株主のものだ」と聞いてそれを鵜呑みにしてしまったら怖いなあと思うわけです。
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